スウェットは多くの人がもっているベーシックアイテムです。部屋着や、運動用に着られています。

しかし、生活に当たり前のようにある「スウェット」という服を、あまりよく知りませんでした。

「スウェット」について、どういう意味を持っているのか、どのようにして作られたのか、調べました。

「スウェット」の意味は

「スウェット」という言葉を辞書で引いてみました。

『デジタル大辞泉』によると、

スウェット【sweat】 の意味
1 汗。
2 裏側を起毛させた、綿のメリヤス地。汗をよく吸収する。

1は、”sweat”という英単語の直訳。2が「スウェット」の意味です。

裏側を起毛させた、綿のメリヤス地。汗をよく吸収する。

「スウェット」という言葉そのものは、スウェットの衣服の意味ではありません。メリヤス地、つまり生地のことです。

スウェットという言葉は、スウェット生地のことであり、そこからスウェット生地でできた衣服も表しています。

トレーナーはスウェット? パーカーは?

「トレーナー」は、スウェットの別名です。

「トレーナー」は英語のように聞こえますが、日本でしか使われていない名前です。アイビールックの生みの親、石津謙介さん(http://www.ishizuoffice.com )がつけた名前です。

では、英語でスウェットのことはどう表現するのでしょうか。”sweat”そのままでは、汗という意味になります。

英語では、“sweatshirt”、 “sweatpant”、 “sweatshort” 。スウェットがトップスかボトムスかで言い方を使い分けます。

フード付きのスウェットのことは「パーカー」といいますが、これもトレーナーと同じように日本だけの名前です。

英語では “hooded sweatshirt”、フード付きのスウェットと表現します。簡単に “hoodies” ともいいます。

メリヤス地とは? スウェットもTシャツもセーターも、編み物


スウェットはメリヤス地という意味です。では、メリヤス地とはなんのことでしょうか。

メリヤスとは

メリヤス地とは、機械で編まれた編み物のことです。編み物というと、手編みのマフラーがわかりやすいですが、手ではなく機械で編んだものがメリヤス地です。

機械では、手編みにはできない細かい目や複雑な模様を編むことができます。

カットソーとメリヤス

「カットソー」はよく使われるファッション用語です。

「カットソー」は、メリヤス地を裁断(cut)して縫い合わせ(saw)て作られる服のことです。

カットソーには、スウェットだけでなく、ポロシャツやTシャツなどが含まれています。つまり、これらはすべてメリヤス地です。

Tシャツもセーターも実は編み物の仲間です。

スウェットはコットンから始まった


スウェットは「綿の」メリヤス地です。綿、つまりコットンであることは、スウェットのアイデンティティです。

スウェットはウールでできたものでした。ウールからコットンへの素材の変化がスウェットを完成させたのです。

スウェットが生まれるまでの歴史を詳しく調べました。

ウールの肌着が流行

1878年、ドイツのシュトゥットガルト大学に動物学と生物学の教授である、イェーガー博士がいました。彼は 動物性の繊維を肌に直接着たほうが健康に良いということが書かれた論文を発表しました。

この論文をうけて、ウールの肌着が販売されました。健康に気を使う人の注目を集め、ロンドンで大人気になりました。そしてウールの肌着は定番のアイテムになります。

19世紀中盤になり、ウールの下着の保温性と発汗性が注目され、ウールのメリヤスのユニフォームが、フットボールやボートレース競技に使われます。そしてスポーツウェアとして、広く定着することになりました。

ラッセルジュニアのアイディア

1920年、アメリカのアラバマ州にベンジャミン・ラッセルの工場がありました。後にラッセルアスレチックとして今も続くスポーツメーカーです。

このとき、社長であるベンジャミン・ラッセルの息子は大学でフットボールチームに入っていました。

ラッセルの息子もフットボールチームでウールのスポーツウェアを着ていました。このウールのスポーツウェアは吸汗性が悪く、肌に刺激を与えるため、着心地が悪いと感じていました。そこで父であるベンジャミン・ラッセルに相談し、ウールからコットンへ変えることにしました。

そして誕生したのが、スウェットです。

スウェットの生地の特徴は裏毛

スウェット生地の一番の特徴は裏側にあります。スウェット生地の裏側は、裏毛が密集しています。

スウェット生地は二重構造

スウェット生地はパイル編み(ループ編み)という編み方で編まれます。

パイル編みは、表の生地を編み上げながら、裏毛を編み込んでいく編み方です。 これにより、表はふつうのTシャツと同じメリヤス編み、裏は裏毛の二重構造ができあがります。

通常の編み物は1本の糸だけで編むことができます。しかし、スウェット生地は裏毛があるため、糸を2〜3本使わなければ編めません。

表用に1本と裏毛用に1本、さらには裏毛をおさえるために1本使うこともあります。これら複数の糸の色や太さが変わることで、スウェット生地のバリエーションがうまれます。

裏毛はパイルかフリース

裏毛の種類には二種類あります。それはパイル地とフリース地です。

パイル地はタオルによく似ていて、糸の輪っかが並んでいます。タオルは織物で、スウェットは編み物という違いがあります。

パイルは英語で “loopback” や “french terry” といいます。

「ループウィール」という言葉が使われていることがありますが、吊り編み機という特殊な編み機のことを “loopwheel” といい、この吊り編み機で編まれたスウェット生地が「ループウィール」です。

フリース地は羊毛のような、起毛した裏毛です。パイル地とは見た目が異なりますが、フリース地は、パイル地をブラッシングして起毛させる行程を加えたものです。

この起毛の技術はフェイクファーなどを作るときにも使われています。

パイル地はまさに「汗をよく吸収する」裏毛で、反対にフリース地は保温性が高くなります。裏毛の違いによって、スウェットは夏用にも冬用にも適応できます。

終わりに

スウェットをスウェット生地に注目して調べてきました。

名前も歴史も特徴も、スウェットはスウェット生地のことだということがよく分かりました。

スウェットの生地は、まだまだポテンシャルを秘めたユニークな生地だと思います。