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〜時代とともに変化する「日常のお洒落」〜

日本のファッション史において、リアルクローズとしてのワードローブ、つまり日常的で現実に根ざしたお洒落着は、時代ごとの生活背景や価値観を色濃く反映してきました。

本記事では、和洋折衷の始まりから現代のジェンダーレススタイルに至るまで、日本のリアルクローズとしてのワードローブが辿ってきた変遷を概観します。

帝国茶房では、史実を大切にしつつも、そこに自由な想像力を加え、『ありそうでなかった幻想的な世界』を商品として表現しています。

1. 和洋折衷とモボ・モガの時代(大正〜昭和初期)

近代化が進んだ大正から昭和初期にかけて、着物と洋装をミックスした和洋折衷のスタイルが登場。

都市部では「モボ(モダンボーイ)」や「モガ(モダンガール)」と呼ばれる若者たちが、ブーツに着物、帽子にワンピースといった斬新なスタイルで街を歩きました。

これは西洋文化への憧れと日本独自の文化の融合の象徴でした。


2. 藍染と襤褸(らんる)に見る庶民の衣生活

一方で、地方の庶民の衣類は藍染や襤褸に代表される質素で機能的なものでした。

農作業や日々の暮らしに適した野良着や作務衣は、再利用や補修を繰り返しながら大切に使われ、「美しさ」という概念とは別の、実直な美意識を育んでいました。

3. 戦後の復興と「暮しの手帖」のお洒落意識

戦後、生活が徐々に安定してくる中で登場したのが『暮しの手帖』などに代表される暮らしに添った情報。

その表紙や挿絵を手がけた花森安治の影響で、女性たちは実用性と美しさを兼ね備えた日常着を意識し始めました。

ベレー帽やシンプルなワンピース、ナチュラルな色使いがこの時代のリアルクローズの特徴です。


4. アイビールックとみゆき族(1950〜60年代)

1950年代後半〜60年代初頭には、アメリカ文化の影響を受けた「アイビールック」が学生や若者の間で流行。

銀座のみゆき通りに集まった「みゆき族」は、ボタンダウンシャツやチノパンを粋に着こなし、日本における「カジュアルお洒落」の原型を作りました。


5. アメリカントラッドとアメカジ文化(1970〜80年代)

1970年代以降、アメリカンカルチャーへの憧れから、デニム、スカジャン、レザージャケットといった「アメカジ」スタイルが広がりました。

のちに『AMETORA』で語られるように、日本人がヴィンテージウェア文化を細部まで研究・再構築し、逆輸入的に世界のファッションに影響を与える現象も生まれました。


6. DCブランドと消費社会(1980年代)

1980年代はDC(デザイナーズ&キャラクターズ)ブランドブームの時代。コム・デ・ギャルソンやヨウジヤマモトなどの前衛的なデザインが、リアルクローズとしても支持され、「日常における非日常」としての御洒落が広がりました。


7. 裏原宿とヴィンテージウェアの社会現象(1990年代)

1990年代に入ると、裏原宿系ブランドや藤原ヒロシらによるカルチャー発信が、日本のストリートファッションを形作っていきます。この時期、ヴィンテージウェアのブームも重なり、米国古着の再評価が進行。リアルクローズとしての古着が社会的ムーブメントとなりました。


8. ギャル文化とストリートカジュアル(90年代後半〜2000年代)

渋谷のギャル文化は、プリクラ、ルーズソックス、ミニスカートといった大衆的なファッションをリアルクローズとして広げました。カジュアルでパワフルなスタイルが若者文化をけん引し、ファッション=自己表現という概念が定着していきます。


9. ファストファッションとミニマルスタイル(2010年代)

ユニクロや無印良品といったブランドの台頭により、手頃でシンプルなファッションが主流に。高機能な日常着がリアルクローズのスタンダードとなり、「お洒落=無理をしない」時代が訪れました。


10. ジェンダーレスと価値観の変化(2020年代〜)

近年はジェンダーの枠を超えた自由なスタイルが受け入れられつつあります。男性がスカートを履いたり、女性がワークウェアを取り入れたりと、性別に縛られないファッションがリアルクローズとして存在感を増しています。


11.リアルクローズは「生き方」そのもの

こうして振り返ると、日本のリアルクローズは単なる服装の変化ではなく、その時代の価値観、生き方、社会状況そのものを反映してきたことがわかります。お洒落は「特別な場」のためだけでなく、日々の暮らしの中で育まれ、選び取られるもの。これからも新しい価値観とともに進化を続けるでしょう。


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